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労働者派遣契約とは?派遣の流れや業務委託との違い、トラブルの事例を解説

労働者派遣契約とは?派遣の流れや業務委託との違い、トラブルの事例を解説

派遣元企業と派遣先企業が結ぶ労働者派遣契約は、トラブルを回避するために欠かせない契約です。しかし、具体的な契約の流れを把握できていない方も多いのではないでしょうか。また、労働者派遣契約は正式なテンプレートがないため、企業によってフォーマットが異なる場合もあります。そのため、労働者派遣契約を結ぶ際は、契約の流れや契約書について知っておくと良いでしょう。ここでは、労働者派遣契約について詳しく解説します。これから契約を締結する方に役立つ情報を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

労働者派遣契約とは

- 労働者派遣の形態は2種類ある

派遣の仕組み

労働者派遣契約と業務委託契約の違い

- 派遣契約の形態は2種類

- 基本契約

- 個別契約

労働者派遣契約の流れ

- 基本契約と抵触日の通知

- 抵触日の通知

- 個別契約

- 派遣先管理台帳を作り、保管する

労働者派遣契約書に記載する事項

- 基本契約

- 個別契約

労働者派遣契約書のひな形

知っておきたい!労働者派遣契約を締結する際の注意点

- 労働派遣できない業務がある

- 許可を受けている派遣会社と契約する

労働者の派遣を受け入れたことで起きたトラブルの事例

- 労働者が派遣先で不正行為をおこなった

- 労働者が派遣先でパワハラを受けた

- 労働者が契約に含まれていない扱いを受けた

労働者派遣契約に関するよくある質問

- Q.労働者派遣契約書は電子データで作成できる?

- Q.労働者派遣契約に収入印紙は必要?

まとめ

労働者派遣契約とは

労働者派遣契約とは

労働者派遣契約とは、人材派遣を目的として派遣会社と派遣先企業が結ぶ契約のことです。労働者は派遣元と雇用関係にありますが、指揮を派遣先から受けながら働きます。雇用主と雇用関係を結び指揮を直接受ける直接雇用とは、雇用先が違うことが大きな特徴です。

また、労働者派遣契約では同じ事業所で3年を超えて働くことはできません。一定の手続きをおこなえば3年を超えて働くことはできますが、異なる「課」への異動のような条件を満たす必要があります。

労働者派遣契約では、同じ会社や部署で長く働くことができないと覚えておきましょう。

労働者派遣の形態は2種類ある

労働者派遣には登録型派遣と常用型派遣の2種類があり、次のような違いがあります。

詳細
登録型派遣  労働者が派遣元に一定期間雇用される派遣をおこなうときに雇用関係を締結し、派遣が終了すれば雇用関係も終了する
常用型派遣  労働者が派遣元に常用雇用される派遣が終わったあとも派遣元との雇用関係が継続される

常用型派遣に比べると登録型派遣は雇用が安定しておらず、次の派遣先を紹介してもらえるか不明といったデメリットがあります。

一方で、登録型派遣は働きたいときに集中して働くことができるため、ライフスタイルや家庭の事情などにあわせて働きたい方におすすめです。

登録型派遣と常用型派遣でメリットやデメリットが異なると覚えておきましょう。

派遣の仕組み

派遣の仕組み

派遣とは、派遣社員と雇用関係を結んだ派遣元企業が、派遣先企業と派遣契約を結び、派遣社員は派遣先企業から仕事の指示を受けながら働くしくみです。

派遣社員から見ると、派遣会社は雇用主であり、派遣先企業は仕事をおこなう勤務先になります。派遣元企業は条件に見合った仕事のマッチング、賃金の支払い、福利厚生などをおこない、雇用主として派遣社員を管理するのが原則です。

一方で、勤務先である派遣先企業は派遣社員に仕事の指示を出す立場にあり、雇用管理はおこないません。

概要
派遣社員 派遣元企業と労働契約を結び、派遣先企業から指示を受けて働
派遣元企業  派遣先企業と派遣契約を結び、労働者に派遣先企業を紹介して給与を支払う
派遣先企業 派遣元企業と派遣契約を結び、労働者に仕事を指示しながら派遣先企業に料金を支払う

派遣のしくみは労働者派遣法によって定められており、派遣元企業は雇用主として、派遣先企業は使用者として労働関係法令が適用されます。

労働者派遣契約と業務委託契約の違い

労働者派遣契約と業務委託契約の違い

業務委託契約とは、自社で対応できない業務を外部の会社や個人に委託することを指します。業務の委託を受けた会社の従業員は、業務を委託した企業からの指示を受けることはありません。あくまでも、社内の指示にしたがって委託業務をおこないます。

一方、人材派遣では派遣社員が派遣先企業から指示を受けて業務をおこないます。そのため、契約相手からの指示があるか否かが両契約の大きな違いといえるでしょう。

また、労働者派遣契約は業務をおこなった時間に対して報酬が支払われるのに対し、業務委託契約は業務の遂行や成果物の納品に対して報酬が生じるのも両者の相違点です。

次の表は、労働者派遣契約と業務委託の違いをまとめたものになります。

労働者派遣契約 業務委託
契約内容 派遣元企業と労働者が契約  委託元企業と委託先労企業や労働者が契約
雇用主 派遣元企業 なし(委託元企業は雇用主ではない)
指揮や命令する権利  派遣先企業 委託先企業や労働者の裁量
提供物 労働力 成果物や委託された業務の遂行
賃金や報酬 給与 報酬

労働者派遣契約とほかの雇用形態との違いを知りたい方は、次の記事をご覧ください。
「派遣社員とほかの雇用形態の比較|メリットやデメリット・注意点を説明」

派遣契約の形態は2種類

派遣契約の形態は2種類

派遣契約の形態は、以下のとおりです。

  • 基本契約
  • 個別契約

契約に関する知識を深めるために、それぞれの特徴について確認していきましょう。

基本契約

基本契約とは、派遣先企業と派遣会社が取引をおこなうことを定めた契約を指します。締結が義務化されているわけではありませんが、会社間のトラブルを未然に防ぐためにも契約を交わすことが大切です。一般的には、お互いに負うべき義務や派遣に係る料金、禁止事項など、次のような事項を契約内容に記載します。

  • 派遣料金
  • 相互義務
  • 損害賠償
  • 禁止事項
  • 契約解除事項
  • 知的所有権の帰属など

基本契約はあくまでも派遣元企業と派遣先企業の一般的な関係や条件を定めたもので、派遣労働者の具体的な条件や期間、業務内容は個別契約で定めると覚えておきましょう。

個別契約

個別契約とは、派遣社員の就業条件などを定める契約を指します。契約の締結と保管が法律で義務化されているため、必ず行おこなわなければなりません。また、契約内容には労働者派遣法第二十六条に記載された項目を入れる必要があります。

労働者派遣契約の流れ

労働者派遣契約の流れ

労働者派遣契約の流れは以下のとおりです。

基本契約と抵触日の通知

まずは派遣会社と契約内容を確認します。双方の合意に至ったら基本契約を締結しましょう。

抵触日の通知

次に、抵触日の通知を行おこないます。抵触日の通知とは、労働者派遣法によって定められた期間期限を超えないようにするためにおこなう行うものです。
法律では、同じ事業所が派遣社員を受け入れられる期間は3年と決まっており、この期間制限を超える日を抵触日と呼びます。派遣先企業から派遣会社に対して抵触日の通知を行ってから、次のステップに進むのが原則です。

個別契約

続いて、個別契約を締結します。こちらの契約及び契約事項については法律で義務化されているため、項目に抜け漏れがないかよく確認することが重要です。

派遣先管理台帳を作り、保管する

派遣先企業には、派遣社員ごとの派遣先管理台帳を作る義務があります。派遣社員の氏名や就業日、業務内容など、就業状況を把握するための項目を管理台帳に記入するのが基本的なルールです。また、管理台帳は派遣契約期間終了日から3年間保管する必要があります。

以上が契約を結ぶまでの流れになるため、あらかじめ把握したうえで必要な手順を踏んでいきましょう。

労働者派遣契約書に記載する事項

労働者派遣契約書に記載する事項

労働者派遣契約書に記載する項目は、基本契約と個別契約で異なります。ここからは各記載項目を詳しく紹介します。

基本契約

おもな記載項目は、以下のとおりです。

記載項目 詳細
派遣料金 派遣料金に関する定めのほか、派遣先企業の都合で休業が生じたときの損害金についての決定事項も記入します。
相互義務 派遣会社と派遣先企業それぞれに課された義務への認識を一致させるために、おもに以下の項目を記入します。

  • 二重派遣を禁ずること
  • 原則として日雇い派遣を禁ずること
  • 期間に関する制限
  • 残業に関する制限
  • 離職してから1年以内の労働者の派遣を禁ずること
  • 法令遵守
  • 守秘義務
損害賠償 派遣社員の行為で派遣先企業が被った損害を派遣会社が賠償する旨の取り決めです。「法律に反する行為により損害を被った場合」など、限定条件を付けることもできます。
反社会的勢力の排除 反社会的勢力との関わりを持たず、排除することを契約者双方で保証する項目です。禁止事項に違反した場合の契約解除は無催告でも認められ、賠償責任を伴わないことも明記します。
契約解除事項 料金や相互義務、損害賠償など企業間での契約として必要な一般的事項を盛り込みます。
知的所有権の帰属 知的財産権が関係する業務に従事する場合、権利の帰属を定めることで問題の発生を防ぎます。

基本契約に法律上の義務はありませんが、派遣会社と派遣先企業の認識を合致させるために欠かせないものです。各項目を細かく確認したうえで、締結するようにしてください。

個別契約

おもな記載項目は、以下のとおりです。

記載項目 詳細
業務内容 「PCを使った会議資料の作成」など、派遣社員が担当する業務内容を具体的に記入します。
業務にともなう責任の程度 派遣社員の役職の有無のほか、権限や部下の人数などを記入します。
就業場所 派遣先企業の名称、事業所名、電話番号を記入します。
組織の単位 「営業部」など、派遣社員が業務をおこなう部署を記入します。また、営業部であれば「部長」のように職長名もあわせて記載します。
指揮命令者 派遣社員に指示をおこなう担当者の氏名、部署、役職を記入します。
派遣期間 派遣社員が業務をおこなう期間を記入します。
就業日 「月曜日から水曜日」など、就業する日を記入します。
就業時間 「10:00〜18:00」など、就業する時間を記入します。
休憩時間 「12:00〜13:00」など、休憩時間を記入します。
安全および衛生に関する事項 労働者派遣法に定められた事項を遵守する旨を記入します。
苦情に関する事項 派遣社員からの苦情を受け付ける担当者の氏名と部署、電話番号、苦情への対応方法を記入します。
派遣契約解除にともなう雇用安定措置に関する事項 契約解除に関するルールを記入します。「派遣社員の責任以外で契約を解除する場合、新たな就業先を確保する」など雇用安定に関する項目も盛り込みます。
派遣元責任者 派遣会社の担当者の氏名、部署、役職、電話番号を記入します。
派遣先責任者 派遣先企業の担当者の氏名、部署、役職、電話番号を記入します。
就業日以外の労働に関する事項 休日出勤が予定されている場合、1ヵ月あたりの休日出勤数を記入します。
派遣人数 派遣会社から派遣される人数を記入します。
派遣社員の福祉増進に関する事項 休憩室や更衣室、給食室以外に派遣社員に利用機会を与えるべき設備について記入します。
紛争防止措置に関する事項 派遣契約終了後に派遣社員を直接雇用する場合に派遣会社に通知する旨を記入します。
派遣社員を60歳以上もしくは無期雇用に限定するか否かの別 60歳以上もしくは無期雇用の派遣社員に限定するか否かについて記入します。
派遣社員を労使協定方式対象者に限るか否かの別 労使協定方式の対象者になるか否かを記入します。
紹介予定派遣に関する事項 紹介予定派遣である場合、その詳細を記入します。

なお、個別契約には労働者派遣法第二十六条で定められた必須項目を網羅する必要があります。派遣社員の就業形態を定める重要な契約になるため、各項目で認識を合致させることが重要です。

労働者派遣契約書のひな形

労働者派遣契約書に記載する事項

労働者派遣個別契約書のひな形は、各都道府県の労働局(参考:労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例)に掲載されています。必要に応じてインターネットで検索すると良いでしょう。

知っておきたい!労働者派遣契約を締結する際の注意点

知っておきたい!労働者派遣契約を締結する際の注意点

労働者派遣契約を締結する際の注意点は以下のとおりです。

  • 労働派遣できない業務がある
  • 許可を受けている派遣会社と契約する

上記の注意点を順番に解説します。

労働派遣できない業務がある

人材派遣における禁止業務((建設業務・警備業務・港湾運送業務・医療施設における医療関連業務・士業))で派遣契約を結んだ場合、違法とみなされるため注意が必要です。

なお、医療関係業務で次の条件にひとつ以上該当する場合は、労働者派遣契約を結ぶことが認められています。

  • 紹介予定派遣をする場合
  • 当該業務が産休産後休業や育児休業、介護休業を取得した労働者の業務である場合
  • 医師の業務であって、派遣労働者の就業の場所がへき地や、地域における医療の確保が必要だと厚生労働省令で定めてある場所

医療関係業務は業務内容と業務がおこなわれる場所によって労働派遣が禁止の場合もあれば、認められている場合もあるため、内容を確認しておきましょう。

許可を受けている派遣会社と契約する

派遣事業は許可制となっており、許可を得ていない派遣会社との契約は違法です。契約を締結する際は、必ず許可証の提出または認可番号の記載を求め、その番号を元に実際に許可を得ているかまで確認するようにしましょう。なお、許可の有無については厚生労働省職業安定局の「人材サービス総合サイト」メニュー「許可・届出事業所の検索 労働者派遣事業」 から確認することが可能です。

労働者の派遣を受け入れたことで起きたトラブルの事例

労働者の派遣を受け入れたことで、次のようなトラブルが起きた事例があります。

  • 労働者が派遣先で不正行為をおこなった
  • 労働者が派遣先でパワハラを受けた
  • 労働者が契約に含まれていない扱いを受けた

労働者の派遣を受け入れることで上記のようなトラブルが起きる可能性があるため、内容を確認しましょう。

労働者が派遣先で不正行為をおこなった

労働者が派遣先で業務に従事しているときに、次のような不正行為をおこなった事例が報告されています。

  • 横領
  • 業務上で知りえた情報の漏洩など

労働者が派遣先企業で不正行為をおこなった場合、債務不履行責任、または不法行為責任が派遣元会社にあり、派遣先企業は損害を請求する権利があります。

労働者が派遣先でパワハラを受けた

労働者が派遣先でパワーハラスメント(パワハラ)を受けたという事例もあります。

たとえば、アークレイファクトリー事件では、労働者が派遣先企業の従業員からパワハラを受けたことで派遣就労を辞めざるを得なくなり、派遣先企業に対して損害賠償として慰謝料の支払いを求めました。

本件のように、労働者が派遣先でパワハラやセクハラなどのハラスメントを受ける可能性があるため、職場環境には注意しましょう。

労働者が契約に含まれていない扱いを受けた

労働者が派遣先企業で、労働者派遣契約に含まれていない次のような扱いを受けた事例もあります。

  • 契約外の業務を任せられる
  • 給与が出ない労働時間がある
  • 労働条件を一方的に変更される
  • 有給休暇が取得できないなど

原則、業務内容や就業時間、休憩時間などは就業条件明示書にて取り決められます。派遣先企業が一方的に変更し、契約に含まれていない指示や扱いを労働者におこなうことはできません。

派遣先企業は従業員に対して、労働者派遣に関する就業条件明示書を通知して理解させておき、派遣労働者との間にトラブルが起きないように注意しましょう。

労働者派遣契約に関するよくある質問

労働者派遣契約に関するよくある質問

契約にあたっては、疑問に感じることも多いのではないでしょうか。ここからは、よくある質問と回答を紹介しますので、役立ててみてください。

Q.労働者派遣契約書は電子データで作成できる?

A.2021年より、労働者派遣契約書の電子データ作成が可能になりました。電子データで作成することで、書類の保存が容易になったり、契約締結に至るまでの業務が効率化したりといったメリットがあります。

Q.労働者派遣契約に収入印紙は必要?

A.収入印紙は必要ありません。印紙税法において「請負に関する契約書は課税対象になる」とされていますが、労働者派遣契約は請負契約とは異なるため収入印紙は不要です。

まとめ

労働者派遣契約は、派遣会社から人材を派遣してもらう際のトラブルを回避するために必要なものです。

基本契約は義務ではありませんが、不要な問題を起こさないためにも派遣会社と派遣先企業の間で締結しておく必要があります。個別契約は法律で義務化されていますので、ひな形を参考にしながら必ず締結してください。

また、派遣労働者を受け入れたことでトラブルが起きたという事例が報告されています。

派遣契約後に認識の齟齬が生まれないように、細部まで納得したうえで契約を結び、トラブルが起きないように職場環境を整えるようにしましょう。

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