労働者派遣法の派遣期間制限とは?例外や抵触日の確認方法について解説

派遣労働者の受け入れを検討している場合には、派遣期間制限について理解しておく必要があります。派遣期間制限には個人単位と事業所単位の2種類があり、違いがわからないという方もいるでしょう。
そこで、本記事では派遣期間制限についてわかりやすく解説していきます。例外や抵触日の確認方法についても紹介するため、派遣労働者の受け入れを検討している方や派遣期間制限の理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
- 個人単位の派遣期間制限
- 事業所単位の派遣期間制限
労働者派遣法の派遣期間制限とは
派遣期間制限とは、労働者派遣法で定められている派遣を受け入れることができる期間の制限です。常用雇用の労働者が派遣労働者で代替されること及び派遣就業を望まない派遣労働者が派遣就業に固定化することを防止するために設けられています。
労働者派遣法では、派遣期間制限として以下2つの制度が定められています。
- 個人単位の派遣期間制限
- 事業所単位の派遣期間制限
なお、派遣期間の制限を過ぎた最初の日を抵触日といいます。
個人単位の派遣期間制限
個人単位の派遣期間制限とは、派遣先の同一の組織単位で同一の派遣労働者を受け入れることができる期間で、3年が限度となります。ここでいう組織単位には、同事業所内の部署が該当します。たとえば、派遣労働者Aさんが2023年4月1日から自社のある部署で派遣社員を受け入れた場合、2026年3月31日まで同じ部署で働いてもらえるといったものです。
なお、期間制限の通算期間がリセットされる空白期間(クーリング期間)が定められているため、クーリング期間が3ヶ月超(3ヶ月と1日以上)ある場合は、同一の組織単位で同一の派遣労働者を新たに3年間受け入れることが可能になります。
事業所単位の派遣期間制限
事業所単位の派遣期間制限とは、同一の派遣先企業で派遣労働者を受け入れることができる期間を3年までと定めたものです。たとえば、派遣労働者Aさんが2023年4月1日からとある企業で働き始めた場合、Aさんは2026
3月31日まで働けます。2023年9月1日に派遣会社から別の派遣労働者Bさんが派遣された場合、Bさんの働ける期間も2026年3月31日までです。
ただし、派遣先企業が、派遣労働者の受入開始から3年を経過するときまでに事業所の過半数労働組合から意見聴取した場合には、さらに最長3年間労働者派遣を受け入れることができます(その後さらに3年経過した場合も同様)。
また、個人単位同様、事業所単位の派遣期間制限にもクーリング期間が定められており、クーリング期間が3ヶ月超(3ヶ月と1日以上)ある場合は、同一の事業所で新たに3年間、労働者派遣を受け入れることが可能です。
派遣期間制限の例外
派遣労働者の属性や業務内容によって、派遣期間制限の例外となる場合があります。以下のいずれかに該当する場合は、派遣期間の制限を受けません。
- 派遣元企業と期間の定めのない雇用契約を結んでいる派遣労働者
- 60歳以上の派遣労働者
- 労働日数が派遣先で雇用される通常の労働者の一ヶ月の所定労働日数の半数以下、かつ10日以下である業務
- あらかじめ一定の期間で完了することが決まっているプロジェクトにあたる業務
- 産前産後休業や育児休業、介護休業を取得する派遣先の労働者の代わりにおこなう業務
抵触日の確認方法
派遣先企業には派遣元企業へ抵触日を通知する義務があるため、派遣元企業へ送った書面や電子メールの記載内容を見ることで確認ができます。とはいえ、事業所単位ないし個人単位において受け入れ日と抵触日を常に確認できるよう、適切に情報を管理しておきましょう。一方、派遣労働者であれば、抵触日を就業条件明示書で確認できます。就業条件明示書とは、派遣労働者が派遣会社と契約を結ぶ際に提示される書面です。抵触日のほかに、就業時間や就業場所、賃金などについて記載されています。
抵触日を迎えた場合の働き方
抵触日を迎えた場合の派遣労働者の働き方には、以下のようなものがあります。
- 事業所単位の受け入れ期間が延長されたうえで、同一の事業所の違う部署で派遣就業する
- 派遣先企業と直接雇用の契約を結ぶ
- 派遣元企業と無期雇用の派遣労働者として雇用契約を結び、同じ派遣先部署(組織単位)で派遣就業する
- 派他の派遣先で派遣就業する
- 派遣労働者として働くことをやめる
- クーリング期間の経過後に同一の事業者で働く
派遣先企業で引き続き働きたい場合の働き方の選択肢には、「同一の事業者の違う部署に派遣してもらう」と「派遣先企業と直接雇用の契約を結ぶ」、「派遣元企業と無期雇用派遣契約を結ぶ」というものがあります。派遣元企業と無期雇用契約を結ぶと、派遣期間制限は適用されなくなります。いずれの働き方においても、派遣労働者の希望だけで決定されるものではありませんが、派遣元企業としては、派遣労働者の雇用安定措置を図る必要があります。
派遣期間制限のメリット
派遣期間制限は、派遣労働者にとって働き方の選択肢を増やせるというメリットがあります。
派遣期間制限が適用される場合には、派遣労働者は3年を超えて同一の組織で働けません。そのため派遣元企業が雇用安定措置を図り、派遣先企業の変更などの対応を取ります。
派遣期間制限によって派遣労働者が働き先を他社に変更してしまうと、3年かけて育成した人材を失うこととなります。同じスキルを持つ人材を確保する場合、採用コストや育成コストがかかるため、コストを削減するために派遣先企業は直接雇用の契約を結ぼうとする場合があるのです。これも雇用安定措置のひとつです。
つまり、派遣期間制限で働く期間を制限することにより、雇用安定措置として直接雇用契約や無期雇用契約、他部署への異動などの選択肢が増えます。
派遣期間制限のデメリット
派遣元企業が雇用安定措置を図る必要があるために、派遣期間制限には派遣労働者にとってメリットのある制度であるものの、デメリットも存在しています。
派遣労働者が「3年を経過しても同じ派遣先の同じ部署で働きたい」と考えていても、直接雇用契約や無期雇用契約が結ばれなければ、他の派遣先を探したり、他の部署へ異動したりしなければなりません。また、派遣労働者自身が働き始めてから3年を経過していなくても、他の派遣労働者が働き始めて3年を経過するタイミングで自身の派遣期間も終了してしまう場合があります。
まとめ
派遣期間制限には、個人単位と事業所単位の2種類があります。派遣労働者を受け入れる場合には避けては通れない制度であるため、派遣労働者の活用を検討している事業者は必ずどのような制度なのか理解しておきましょう。
派遣先の企業には、派遣労働者を受け入れた際に派遣元の企業へ抵触日を通知する義務があります。抵触日がわからなくなることがないよう、管理を徹底しましょう。。